今回は、「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」の最終回として、<美意識>を持たない人がどのように危険なのか、アイヒマンという人を例にとって考えてみましょう。
<美意識>はすべての人に必要なものです。アイヒマンのようになってからは遅いのです。
- アイヒマン
- 神に委ねられた真・善・美
- まとめ
アイヒマン
アイヒマンとは、ナチスドイツにおけるユダヤ人虐殺において、ユダヤ人の逮捕・勾留・移送・処理などの効率的なシステムを作るにあたって主導的な役割を果たした人物です。戦後アイヒマンは拿捕され、裁判にかけられますが、彼は「自分は命令に従っただけだ」と無罪を主張したのです。
アイヒマンは全く持って残虐な人物ではなく、粛々と指示に従う誠実な公務員であったと言われています。しかし、彼は指示に従うのみで、「人を殺す」ということについて自分で考えることをしなかった。彼には自分で考える<哲学>がなかったのです。人間はどう生きるべきなのか、彼には<美意識>が欠如していた。
誠実な日本人にもこういう人は少なからずいるのではないでしょうか。上司に言われたらなんでも従う。「改ざんしろ」と怒鳴られれば、その指示に従う。「上司に言われたから」という言い訳はアイヒマンと同じです。
自分が行動する時、その責任を担うのは自分だけです。指示が下りてきたからといって、その指示に従うかどうかはあなた次第です。自分の頭で考えて、自分の<美意識>に照らし合わせて、どんな行動をとるべきなのかを常に考えていかないといけない。そのために日ごろから<美意識>を鍛えていかないといけない。
決して<美意識>は選ばれた人だけが磨くべきスキルではない。人として生きていくために、全ての人に求められるもの、それが<美意識>なのです。
「悪とは、システムを無批判に受け入れることである」
ハンナ・アーレント
(中略)
この「システムを無批判に受け入れるという悪」は、われわれ誰もが犯すことになってもおかしくないのだ
神に委ねられた真・善・美
14世紀のイタリアから始まったルネッサンス(中略)はよく「人文復興」と訳されますが、要するに「人間性=ヒューマニズム」の回復が起こったわけです。
(中略)
それまで神様に委ねられてきた「真・善・美」の判断を、自分たち人間が担うようになったわけです。
「真・善・美」とは、それぞれ科学・哲学・芸術に対応している。これらによって<美意識>は形成される。
ルネサンス以前は、キリスト教的システムによって、神がこれらを規定していた。何が正しいのか、何をしてはいけないのか、全ては神に委ねられていた。ルネサンスによってその判断を人間が担うようになった。
しかし、19世紀、20世紀と、物質主義・経済至上主義によって人間の<美意識>は廃れていった。経済が「真・善・美」の判断を担うようになってしまった。
筆者は、21世紀が新しいルネサンスになればいいなと願っています。「真・善・美」の判断の権限を、経済から人間が取り戻してほしいと。「2世紀にわたった文化的停滞を終焉させた2度目のルネサンス」として31世紀の歴史の教科書に載ることを望んでいます。
これらはひとえに私たち自身の選択にかかっています。経済至上主義・資本主義を続けていくのか、<美意識>を磨き、価値主義・幸福主義へと舵を切っていくのか。すべては私たちの選択次第です。
読者の皆様におかれましては、本書が、世の中で通説とされる「生産性」「効率性」といった外部のモノサシではなく、「真・善・美」を内在的に判断する美意識という内部のモノサシに照らして、自らの有り様を考えていただくきっかけになれば、著者にとってこれほどの幸福はありません
本書はこう締め括られています。
是非、今一度「真・善・美」というものについて考えてみてはいかがでしょうか。<美意識>について考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
「真・善・美」というものは人間が本来負い求める三大徳といわれています。
何が正しいのか、何がいいのか、何が美しいのか。自分の価値観に従ってこれらを選択できる方が幸せだと思いませんか。誰かが面白いというテレビを見ても必ず面白いと感じるとは限りません。誰かが美しいという人を見ても必ず美しいと感じるとは限りません。自分の価値観を決められるのは自分だけです。
しかし、今は自分で「真・善・美」を選択できていない。その権限を経済に奪われている。お金が稼げる仕事について、お金がかからない食材を食べて、全ての選択がお金基準になってしまっている。それが経済至上主義であり、資本主義なのです。
お金というモノサシから抜け出して、自分の思うがままに生きてみたいと思いませんか。是非、<美意識>を磨き、自分が本当は何を望んでいるのか、しっかり自分と向き合ってみてはいかがでしょうか。
非常に興味深い一冊でした。
是非、手に取って噛みしめて頂きたいなと思います。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
本記事はあくまで830の主観を織り交ぜた上で、書籍の紹介をさせて頂いております。書籍との食い違いが生じてしまっている場合もございます。ご了承の上、ご理解頂けますと幸いです。
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